動物病院を開業してすぐは患者が順調に来てくれるだろうか、蓋を開けて見ないとわからないのが実際のところでしょう。
個人事業主の院長は、来院数によって売上管理と経費の割合を考え、動物病院の経営を続けていかなければなりません。
経費は少ない方が良いのですが、節約しすぎで魅力の無い病院になったら本末転倒です。
開業時のスタッフは最小限にして、毎日の診療スケジュールや来院患者数が予測できるようになってから、雇用することを考えるようにしましょう。
■夫が院長、妻が受付スタッフ兼助手からスタート!
診療売上に掛かる経費の割合は、開業当初は大きくのしかかってきます。
人件費は、動物病院を支える受付スタッフや動物看護士、看護助手、勤務獣医などに支払う給料等になりますが、売上に占める人件費の割合は獣医の場合45.8%と出ています。大変大きな数字です。
経費には医療消耗品代や借入金返済、賃借料なども含まれるため、経費に占める人件費の割合が大きくなると他の経費の見直しが必要になってきます。
青色申告している個人事業主は、「青色専従者給与」の制度を使うことが出来るので、ある程度の収益が見込めるようになるまでは、獣医の院長と奥さんの二人で頑張っていきましょう。来院数を把握してスタッフが足りなくなってから、パートのスタッフを増やしていくようにした方が無駄のない人件費の使い方が出来るようになります。
■人件費に絡む諸経費
人件費とは、単純に言えばお給料の事ですが、給料はただ支払えば良いというものではありません。
雇えば雇用契約が発生し、勤務時間によって雇用保険や社会保険への加入が義務付けられています。
パートスタッフを雇用したとして、「時間給×勤務時間=給料」で済む問題ではありません。
雇用保険料・労働保険料・社会保険料等、これらには必ず会社負担分が発生します。
この会社負担分は経費で落とすことが出来ますが、出来れば負担が無い方が良いのです。
社会保険料や労働保険料の会社負担分を回避する為に、外部派遣社員を雇う会社が多く存在します。
個人事業主である病院は、診療時間が午前と午後に分かれています。
この診療時間や診療日によって、1週間の勤務時間を1人当り20時間以内に抑える勤務態勢を作ることで、人件費に付随する経費の削減をすることが出来るのです。
■人件費を抑えるパートの雇い方
1人8時間5日勤務よりも、1人3時間/週3日~4日勤務のパート社員を2人雇用する方が経費を少なくすることが出来ます。
【例】
診療時間・・・9:00~12:00(3時間)、16:00~19:00(3時間)、木・日午後休み
勤務時間・・・8:30~12:00(3.5時間)、15:45~19:15(3.5時間)
① フルタイム1人の場合・・・@1000×7.0H×22日=154,000円
② 半日パート4人の場合・・・@850×3.5H×11日=32,725円×4人=130,900円
単純に分かりやすくする為に数字選びましたが、①フルタイムの場合は、時給単価も高めになり、1週間の勤務時間が38.5時間になる為、社会保険・雇用保険への加入が必要となり、会社負担も発生します。②3.5時間パートの場合は、4人雇用しても1人当りの1週間の勤務時間が10時間程になる為、社会保険・雇用保険加入の必要が無く会社負担がありません。
また、このパートスタッフに院長の奥さんがシフトに入ることで、人件費はもっと抑える事が可能になります。
スタッフを雇用する時になって考えるよりも、事前に試算して税理士と相談しながら将来の収支予測を立てることで、不要な経費を抑える事が出来るようになります。