新しく動物病院を開業するにあたって、準備期間にかかる費用はどうしたらいいのでしょう。
動物病院の開業は、法人化している大規模病院よりも個人経営の動物病院の方が多いことから、今回は個人事業主の開業費について、どのような費用が開業費に含まれて、どのように会計処理をすれば良いのか、わかりやすく説明していきましょう。
■個人事業主の開業費に含まれる費用
個人事業は事業開始してから「開業届」を税務署に提出することで、個人事業主になります。
「開業費」とは、実際に営業活動を始めるまでに「特別に支出した」費用のことを言いますが、個人事業主の場合は、「特別に支出した」費用以外の経費も含めることが出来ます。
【特別に支出した費用に含まれる】
・チラシや広告、パンフレットなどの制作費、広告宣伝費
・ホームページやインターネット広告のデザイン料
・会社の印鑑や名刺の制作費用
・外注先などとの打ち合わせ費用、会議費
・開業活動に必要な交通費、宿泊代
【特別に支出した費用以外の経費】
・仮事務所や駐車場などの賃借料
・電話、インターネットなどの通信費
・従業員の給料
・事務用品等の消耗品費
・電気、ガス、水道料などの公共料金
・借入金返済利息
・保険料など
開業費として計上しても良い範囲やその期間は、明確にされている訳ではありません。
「常識の範囲内」であり、開業に必要な経費である事の説明が出来れば、開業後に「開業費」として計上することが出来ます。
領収書と税務署を納得させる理由があれば、開業前半年~1年程が期間の目安にされます。
■「開業費」の会計処理は?
営業活動前にかかった経費は、開業準備期間であり通常営業期間ではないため、「開業費」という「営業外費用」になります。
「開業費」は営業開始前の費用である為、その都度で会計処理は出来ません。
開業後に経理処理することになるため、事前に領収証の保管といつ、どこで、誰と何の為に使った費用であるのかを明確にしておく必要があります。
これらの情報と領収証をもとにして、営業開始後に「開業費」として処理しますが、この「開業費」は「繰延資産」に計上できます。
「費用」であるのに「資産」勘定になるのですが、開業前の支出はその後(開業後)1年以上に渡って、支出した効果があるものを「繰延資産」とされるのです。
■「開業費」の計上は節税になる!
「開業費」の仕組みを知らず、開業前にかかる費用を院長の個人負担で支払いして領収証も保管せず、何に使ったかわからなくなっていると、開業後に大変勿体無いことになります。
開業後1~3年ほどは、支払う経費の方が多く売上が少ない経営が予測され、赤字になる事もあります。
「繰延資産」である「開業費」は、会計上5年(60ヶ月)で均等償却することが出来ますが、いつ償却しても構わない「任意償却」も認められている為、「任意償却」を上手く利用して利益が出た時に償却することで、節税につながるのです。
「開業費」の範囲に含まれるものは、可能な限りまとめておいて「繰延資産」計上するようにしましょう。