動物病院の院長は獣医としての仕事が本業なので、経理や会計上の処理については、経理担当者にまるごと任せたり、会計士や税理士に頼んでいると言われる方が多くいます。
「減価償却」などと言われても、何がなんだかわからないのが正直なところでしょうが、経理の仕組みを知ることで、節税出来て利益を増やすことにつながるとしたら、面白いと思いませんか。
■「開業費」の償却ってどういうこと?
動物病院の営業を開始する前にかかった費用は「開業費」として、「繰延資産」勘定に計上できます。
「開業費」と「繰延資産」の関係は別のところで説明しましたが、「繰延資産」に計上すると、固定資産の減価償却と同じように、「償却」することで費用として処理することが出来ます。
しかし、固定資産の減価償却と違い、「開業費」は「任意償却」を選択できるのがポイントになります。
「開業費」の償却には、2つの方法があります。
① 均等償却・・・固定資産の減価償却で使われる、5年均等に分割して毎年償却する方法。
② 任意償却・・・好きな年に好きな金額を償却できる方法で、5年間に償却しなければならない決まりは無く、金額にも限度がありません。
「開業費」の償却方法は、「任意償却」を選択するのが最も節税に有効な方法となります。
■「任意償却」の具体的なやり方は?
個人事業の動物病院が開業からすぐに利益を出すことは無く、開業年度は赤字、それから数年経過してやっと利益を得るようになります。
利益がなければ納税は発生しないので、この時期に「開業費」を償却して経費にしてもマイナスを増やすだけなので、得策ではありません。
「任意償却」を選択しておけば、数年後安定した利益が出るようになった時に「任意償却」を行う(経費計上する)ことで、会計上の利益を縮小することが可能になります。
これによって、納税額を節税できるという訳です。
「任意償却」に、期間と金額の定めはありません。
都合の良い時に償却することで、経費と利益の兼ね合いを見計らって、確定申告のタイミングで「任意償却」を決めれば良く、個人事業主の納税に優しい制度といえます。
■「開業費」の「任意償却」で気を付ける点は?
経理処理をする時、お金の動きを連想するのは至極当たり前のことなのですが、実際に金銭の動きも領収証などの書類の受け渡しもない会計上の処理があります。
それが、「繰延資産」計上や「任意償却」の処理になります。
すでに金銭の動きは「開業費」を計上した時点で終了しているので、その後の処理に実際のお金は動きません。
「任意償却」の処理は会計上の問題で、金銭は関係ありません。
そのことを十分に理解しておきましょう。
●「開業費」に出来る支出には必ず領収証と何の費用か分かるようにしておく。
●「繰延資産」は、「任意償却」がいつでも出来るように資産残高管理を徹底する。
●「任意償却」する時は、経費と売上の見極めを十分にして最も節税になる年に実行する。
「任意償却」は節税に直接つながる便利な制度です。
常日頃から、税理士や会計士と経費や利益について話し合い、節税に努め賢い納税を行いましょう。