動物病院では、高額な医療機器や検査器具が必要になり、待合室ではカウンターやキャビネット等高額な備品も用意しなければなりません。
これらの器具備品の代金をすべて経費として購入した年に処理すると、莫大な赤字になってしまいます。
「減価償却」という科目が経費処理の中にあるのですが、経理担当者でも個人会社の社長でも意味が良くわからないという人が多くいます。
動物病院も普通の事業所と変わりませんから、経費処理で減価償却という項目を利用して、経費の正しい考え方、適切な処理をすることで経営に良い税金対策が出来ます。
■ そもそも「減価償却」ってどういうこと?
動物病院の開業には多額の費用がかかり、金融機関からの借入や親からの資金援助などで、高額な医療設備や建物、備品等を整えていきます。
それらは、病院の資産になりますが借金して資産を作り、借金返済しているのに高額設備の経費を支払っている・・・
どれだけ院長が頑張って診療しても、その年に医療器具の代金を全額支払いしたら、大赤字になります。
決算で赤字になれば、納税する必要はないので、ラッキーと思われるかもしれませんが、翌年は、高額な経費が発生しないので、売上は昨年とほとんど変わらないのに収益が増大になり、多額の納税をしなければなりません。
治療器具や高額備品は、数年に渡って使い続けるものである事から、一括で経費として処理するのは妥当ではないという理由から、「減価償却」という方法を取っているのです。
減価償却には定額法(毎期一定の額を償却する)と定率法(最初は多く後になるほど少なく償却する)の方法がありますが、個人の場合は「定額法」が原則になっています。
■ 減価償却の会計処理の方法(例)
【減価償却のしくみ・例】
診察台1,000,000円を1台現金で購入した場合、「固定資産(診察台)」に計上されて、資産勘定で管理していきます。耐用年数(償却期間)5年とします。
この場合に1年で1,000,000円を経費にしてしまうよりも、耐用年数5年間に渡って分割して経費に計上していく方が、現状に合った処理方法と言えます。
経費の捉え方としても正しく、税務対策にもなる為「減価償却」科目を使用して経費の分割を行います。
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
診察台(〇〇1234) | 1,000,000 | 現金 | 1,000,000 |
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
減価償却費 | 200,000 | 診察台(〇〇1234) | 200,000 |
※診察台の後ろに付けた番号は、有形固定資産の管理をしやすくするために機種番号など記載しておきます。
※固定資産となる備品などを購入した時は、資産台帳に記載して管理し「償却資産申告書」を毎年1月末日に提出して、納税が必要になります。
■ 金融機関の融資に「減価償却」を活用する!
今までの説明でも分かるように、減価償却を経費に計上することで、収益が減ることになるので節税になります。
そして、減価償却費は金融機関から借り入れをしたい時の、借入できる金額を決定する指標になります。
決算書を基本に金融機関は査定するのですが、「経常利益+減価償却費の合計額」で返済すると何年かかるかが計算されます。
と、いうことは減価償却費を利益と合算しているので、利益と考えられるのです。
金融機関から借り入れして、診療機器などの有形固定資産を増やし減価償却費にすることで、利益を縮小して節税しながら、金融機関では利益と同じ扱いになってまた借入しやすくなるという、なんとも不思議な経費になるのです。
「減価償却費」を使わない手は、ありませんね。